平成23年11月26日(土)、当社の京都本社においてエービーカーゴ西日本(株)と合同でドライバー研修会を開催しました。
平成22年度に続いて2回目の取り組みで、今回はエービーカーゴから46名、当社から30名の計76名が参加しました。
午前中、両社の社内研修を少し実施したあと、4階会議室に全員が集まり、11時20分から、丸山利明常務が「知っておきたい事故・トラブル解消」と題し、プロドライバーとしての危機管理意識について講義を行いました。
丸山常務は、当社で発生した事故や関連する企業の事故事例を挙げながら、
・高速道路でバーストなど車両トラブルが発生して路肩に停止した場合、無理をして非常電話を探すよりも携帯で110番通報するほうが安全
・高速道路で車線変更をして追突されたら、損害賠償では8割はこちらの責任となる。車線変更は「命がけで」行ってほしい
・居眠運転で死亡事故を起こしたら、いくら業務が過酷で事業所にも責任があっても、結局ドライバーが責任を取ることになる。加害者も不幸です。自分と家族を守り、会社を守るためにも、眠いときには「勇気を持って寝て欲しい」
──などプロドライバーとしての対処方法を解説しました。
いずれも、実際の業務のなかから得た貴重な情報であり、熱心にノートをとるドライバーの姿も多くみられました。
午後からは、2班に分かれてローテーションで「車両感覚と安全なバック」「危険回避訓練」の実技指導を行いました。
車両感覚はリアオーバーハングや、ハンドルの切れ角、バック時の安全な確認方法を理解するための実習です。
【リアオーバーハング】
まず、大型トラックのハンドルを右一杯に切って前進移動したときの左端後部の軌跡をインストラクターが計測しました。
多くのドライバーが予測しているのと違い、リアオーバーハングはいちばん大きくはみ出した所で1m20㎝程度でした。
このことから、壁や他の車両との横の間隔が1.5m程度あれば、思い切ってハンドルを切って出ても大丈夫だということを、実感としてつかめました。
さらに、ハンドル一杯(3回転半)ではなく1回転半程度回して前進してみました。するとリアオーバーハングのはみ出し幅は3分の1の35㎝ 程度ですみました。
「自分のトラックでも一回測ってみてください。最大でおよそ1.5m、1回転半なら35㎝といった数字をつかんで運転することが大切です」とインストラクターが強調しました。
【前進とバックのハンドル切れ角の違い】
また、ハンドルを一杯切って前進したトラックが、ハンドルをそのままにした状態でバックすると、元の場所に戻れるかどうかの実験をしました。
ドライバーに聞いてみると「戻れると思う」という人と「戻れない」という人の二手に分かれましたが、実際にバックしてみると、最初に止めていた側線より外側に少し(20センチ~25センチ程度)はみ出すことがわかりました。
これは、前輪の内側のタイヤと外側のタイヤでハンドルの切れ角が違うため、バック時には前進時と同じ軌跡を走行しないからです。「元の場所に車体が戻ると思い込んでいると、ギリギリの場合は隣の車や軒に当たる危険があることに気付いてください」とインストラクターが強調しました。
【安全なバック】
狭路バックの実技研修では、パイロンなどで狭い空間を作り、そこにトラックをいかに効率よく、安全にバックで入れるかの研修を実施しました。
パネルバントラックのバックモニターを使って、一度の切り返しで、両方のミラーに狭路の両端が映るようにすると、両端とも当たらずに、安全にバックすることができます。
そのための、ハンドル操作をする場所を指摘しました。
日頃トラックの運転に慣れているドライバーでも、感覚ではわかっているつもりが実際にやってみると勘に頼っていることがあります。狭路バックの研修では、こういう方法でバックすれば、誰でも安全に狭路に入れることができるコツを学びました。
危険回避研修では、まず時速40キロで走行し、前方信号の左側のランプが点けば右側に回避、右のランプが点けば左側に回避、3つ点灯すれば急停止する体験をしました。
次に、前方のパイロンを5.5m近づけて同じように体験しました。すると、判断ミスをして回避できない人が続出しました。そこで、同じ距離で、時速30キロに落として体験すると、余裕を持って回避できました。
5.5mという距離は時速40キロで走行するとわずか0.5秒の距離です。それだけの距離が短くなっただけで回避することが難しくなったのです。
この研修では、回避距離を0.5秒分短くしたり、10キロスピードが上がるだけで安全に回避できる余裕がなくなることを体験し、スピードを落として走行することが大切であることを学ぶことができました。
また、車がセンサーを通過したときに信号が変わりますが、運転者には信号が変わってから脳で判断するまでに時間がかかるので、すぐには認知できません。
その間も車は進行しているわけですから、信号が変わった地点と運転者が認知した地点が違っていることもわかりました。
日頃の運転でも、人間の認知能力には限界があることを知って、安全運転を心がける必要があることを学びました。
また、後部座席シートベルトの非着用でどんなショックがあるか、交替で乗用車に試乗し、低速でも急ブレーキで大きな衝撃があることを体験しました。
青柳修治講師
現役のプロドライバーが揃っている中で、こんな事知ってる?と失礼に感じる様なことも沢山申し上げたかもしれません。
しかし、もし今まで気が付かなかったことを少しでも体験し、実感することができたとすれば、私達としては、これほど嬉しいことはありません。
研修で経験して得たものを仕事に生かすとともに、他の皆さんにも伝えていただけたら幸いです。
後部シートベルトの重要性などは、家族や同僚の方にも伝え、事故防止のリーダーとなってください。
丸山利明常務
昨年に続き、両社で力を合わせて意義深い研修が実施できました。
安全研修の効果もあり、当社の交通事故は年々減少していますし、最近は、安全風土が育ってきたなという実感を持っています。
皆の安全に対する「うるささ」が出てきました。こうした「風土」が育つことこそがもっとも大切だ感じています。
エービーカーゴさんも同じような感触を持っておられると思います。
午前の講義でも申し上げましたが、皆さんの家族と子ども、会社を守るのは皆さん自身です。勇気をもって安全運転を実行し、仕事を守って欲しいと願っています。
宮本秀俊社長
危機回避実験では、わずか10キロの違いですが、その重大さをよくわかってくれたと思います。
たかが10キロ、されど10キロです。
この違いがわかるかどうかが、一流とニ流の別れ道です。野球で言えば100打席に25本ヒットを打つ並のバッターか、30本打てるバッターか。残り5本を打てる3割バッターのようなプロドライバーになってほしいと思います。それには、ちょっとしたことが非常に大切です。
来年度は、当社も協力会社への教育に取り組む予定であり、皆さんが堂々とした講師となれるような環境づくりをすすめていきたいと思います。
本日は、会場を提供し、運営にあたっていただいたタカラ物流システムの皆さん、本当にありがとうございました。
(エービーカーゴ西日本(株)の皆さん、全員で起立して礼をされる)
【タカラ物流システム㈱・エービーカーゴ西日本㈱ドライバー合同研修データ】
■日時 2011年11月26日(土)
■場所 タカラ物流システム株式会社■参加者 両社、計76名
■インストラクター (敬称略・順不同)
・青柳修治(JR西日本マルニックス)
・森井満夫(エービーカーゴ西日本)・古谷俊之(エービーカーゴ西日本)
・澤井和樹(タカラ物流システム) ・野村康志(タカラ物流システム)