休憩をはさんで、安全・品質・環境への取組みについて、丸山利明常務執行役員(安全品質環境推進室長)が報告しました。
まず、昨年発生した労働災害の情報を皆さんと共有し、「輸送安全作業マニュアル」に沿った対策をご報告したいと思います。
当社千葉支店にて、フォークリフトの積込み作業中、運転者が緩衝材を入れる時にフォークリフトのバックレストと荷台の鳥居に腕を挟む事故が発生しました。原因は、積込み手順で決められているリフトマンとの声掛けが不足していたことにあります。
再発防止策を話しあう中で、作業マニュアルに沿ったルールとして相互の声かけともに、作業指揮者をどうするかが問題になりました。従来、駐在するリフトマンが作業指揮をすることが暗黙の了解になっていましたが、これを逆転して、「運転者が作業指揮をして」フォークリフトを動かすということで事故防止の対策を立てました。
現場の声を優先し、現場で実際に作業する者が対策を考えることが、真の事故再発防止になると考えています。
4月29日の関越道におけるバス居眠り事故を受けて、現在、バス事業者に監査が入っています。トラック運送事業にも9月以降、特別監査に入るという情報が入っており、当然、居眠り運転の防止対策について厳しい調査が行われると考えられます。
そこで、過労・居眠り運転防止対策として、以下の課題をご提案したいと考えます。居眠り運転の防止対策は、乗車前と乗車後の対策の2つに大きく分かれます。
乗車前の対策としては、
・充分な睡眠と休養をとる。
・適性飲酒を守る──乗車前日の深酒を禁止する
・投薬などの体調管理をしっかりする
というプロドライバーとして当然のことがあげられます。
■90分リズムで休憩をとろう
乗車後の居眠り防止対策としては、「ドライバーの防止対策」「職場の防止対策」「車両・ハード面の防止対策」の3つの側面があります。
まず、ドライバーのできる居眠り防止策として、「90分リズムでの運転」を提案します。これは山梨医科大学の田村康二教授が推奨している理論で、人間の身体は90分間隔のリズム(ウルトラディアンリズム)で動いていて、90分も経つと脳の活性・集中が途切れて機能低下が現れます。授業や講演が1時間半で終わるのもこのためです。ですから、1時間半運転したら休憩するのが理想です。なかなか実践するのは難しいかも知れませんが、チャレンジしていただきたいです。
2番目は「強い照明を浴びる」。暗くなると人間の身体には眠気を誘うメラトニンというホルモンが分泌されます。しかし、明るい光を浴びるとホルモン分泌が抑制されますので、夜間なら自動販売機など強い明かりの前で体操をすると効果的です。
3番目は「ガムを噛む」。ガム協会の推奨では眠くなる前に噛むのがポイントと言われています。
4番目は、「30分以内のうたた寝をとる」。うたた寝は30分以内であれば眠気防止に効果的なことが様々な研究で明らかになっています。ただし、それ以上の昼寝などはボケや眠気を助長するので、30分が目安です。
5番目は、「仮眠をするなら4時間以上」のまとまった睡眠をとること。中途半端な仮眠はかえって眠気を誘うだけでなく、単なる休憩時間にしかなりません。4時間以上のまとまった仮眠は、休息期間とできますので、運行管理上も大きな意味があります。
■勇気を持って眠る職場づくりをしよう
「職場の防止対策」は以下の5点です。
■居眠り警告シートも登場
「車両の防止対策」としては、当社の15トン車にも標準整備されている「車両ふらつき警報」や「レーンキープアシスト」などがあります。
車がドライバーの運転のクセを覚えていて、普段と違うハンドル操作などの行動をしたら警告ブザーや、補正をします。
また「衝突被害軽減ブレーキ」は2014年秋以降、自動的にブレーキをかけて追突被害を軽減する装置の導入(大型車)をメーカーに義務づけました。
このほか、運転席シートのセンサーが血液の流れを分析し、居眠りを感知して警告を発信する「居眠り警告シート」も登場し、市販されています。
以上のような居眠り運転防止策を企業防衛として考慮し、取り組んでいただきたいと思います。