第15回パートナー会議―講演

タカラ物流システム(株)

代表取締役会長

 

大谷 將夫

 

 


 特別講演は、初代社長に就任して以来、当社を儲かる会社に変身させて毎年増益を続けてきた大谷会長の経営哲学を紹介しました。

Ⅰ 私の経営観

「諦めないこと」がリーダーの条件

大谷 縁あって私がタカラ物流システム(株)に入ってから14年がたちました。その14年間に、いかに「儲かる会社」づくりに努めてきたか、私の経営観とコストダウンの実践などの一部をご紹介したいと思います。


 1999年に宝酒造から出向してきたとき、物流の仕事はまったく知りませんでしたから、物流業界に詳しいコンサルタントの先生をお願いして毎月、社員とともに勉強しました。有意義な勉強でしたが授業料も高く、6年間で約1億円の投資をいたしました。
 しかし、この投資のおかげで5億円ものコストダウンができましたので、4億円のメリットがあったことになります。

  
 私が、社長となったとき、経営者として2つの行き方をしようと考えました。
 その一つは「自分の好きなように会社を運営させてもらおう」ということ。そして二つ目は「必ず結果を出さなくてはいけない」ということです。

 経営の仕事は結果の責任をとることが全てだからです。結果として、2012年までに売上で3倍、利益では4.5倍の伸び率を記録することができました。


 そのためには、どういうことがポイントとなったか?私には、座右の銘として松下幸之助さんの次の言葉がありました。
「諦めるから失敗に終わる。成功するまで続ければ必ず成功する」

 諦めずに成功するまで頑張る強い心が必要だというのです。リーダーは「強い思い」と「諦めない心」が求められます。自分が良いと思ったことは、諦めずに結果が出るまで追及する姿勢がなければいけないのです。

 この姿勢を支えるため、リーダーは徹底的に勉強し続けることです。物流事業としてのあるべき理想の姿を日本経済、世界経済のあり方も踏まえて勉強する──リーダーが勉強し続けなくて、若手が勉強するでしょうか?そうした広い視野を持って勉強できる人材を育てることも理想です。
 理想主義ととともに重要なのは現場主義。現場の実態を見ることなくして、理想と現実のギャップは埋められません。現場を知って、ギャップを段階的に埋めていくことが経営改革の基本となります。

儲かる仕組みづくりを作ろう

大谷 企業が儲かる仕組みは、売上を大きく伸ばすことと原価・経費を徹底的に下げることです。

 単に節約だけではいけませんし、売上至上主義に陥ってもいけない。両方を同時に進めなければ利益は上がりません。

 

 よく「頑張れば会社が儲かる」と言われますが本当でしょうか?単に頑張っているから儲かるのではなく、「儲けるように考えて」頑張るから儲かるのです。知恵を使って努力しているかということが最も重要なポイントです。

変化に対応できる柔軟な感性を養う

大谷 人生は瞬時、瞬時にチャンスがきます。それをつかめるかつかめないかがポイントです。長崎運送という会社を買収したとき、ある方のアドバイスで、「この 会社は工事に素晴らしい人材がいます」という話がありました。調べてみると確かに工事の利益率が高い。そこで今までこの会社は、輸送を1、工事を2に考えてきたのですが、工事を1に輸送を2とした経営戦略を行う方向転換をして結果、8か月で再建することができました。

 あの話を何気なく聞き流していれば、今の成功に結びつくことはなかったでしょう。チャンスを捉える感性を養うことが重要です。

 

 また、企業は大きいから強いから生き残るのではなく、変化に対応する力があってこそ生き残るのです。今、世の中はものすごいスピードで変化しています。変化に対応できない企業は脱落していくのです。変化を誰よりも早く察知し対応ができる感性が必要です。

情熱を忘れず、常に明るく前向きに

大谷 ただし感性が「ひらめいても」、きらめかない人が多いのです。

 「ひらめき」から「きらめき」へ。これは発想は大切だけれども、考えているだけではだめということです。行動が伴わないと「きらめかない」。

 経営者は常に、行動、行動、行動あるのみです。


 さらに、情熱にまさる能力はありません。トップの能力よりも常に「会社を良くする」という情熱を持つことこそ大切です。人間には防衛本能があり、「自分が一番能力がある」という意識になると、自分より優れた人材を蹴落とそうとしてしまう。会社を良くしたいという情熱こそ一番大切なのです。

 

 また、「明るく・元気に・前向きに」ということが大切。この姿勢が人間関係を良好にして仕事もうまくいく。仕事がうまくいくと「つき」がきて、運が開け、成功に結びつく。ポジティブな姿勢こそが自分を発展させ、仕事を発展させます。

経営計画は課題づくり・計画づくり

大谷 どこの会社でも経営目標を立てますが、ここで目標や課題に対して「どうしたらできるか」の具体的方法論に対する議論がないと意味がありません。

 私達は、大きな課題、中課題、少課題にわけて、常に誰が、どういう方法で、いつまでにするのか──を全てにおいて具体的に計画決定しています。

 さらにその計画を毎月社長が見て、進捗状況をチェックするのです。期限までに解決できない案件があれば、計画を練りなおして、いつまでに誰がどうやるかを再度決定して実行させます。そのままにしておくから課題が残るのです。

 常に綿密な計画づくりをしておけば実行は簡単にできます。計画の過程が7分で実行は3分です。

 

 もう一つ、計画を立てるときの禁句は「出来そうもない、無理です、難しい」。ベテランはすぐこういうことを言いますが、これをうちの社内では一切言わせない。出来ないと認めたら解決のための計画は立てられません。「どうしたらできるのか」ということだけを考えるのです。もちろんそのための予算や人材については考えておくべきです。

 

 さらに、エラーをしない会社にしようとするのも良くありません。ノーブレーノーエラーでは会社は発展しない。人の守備範囲の球をとりにいって失敗するのを許す、チャレンジ精神を大切にする風土づくりをしなくてはならないのです。

コミュニケーションを大切にする風通しのよい会社に

大谷 コミュニケーションを大切にする会社が伸びるのです。たとえば成功事例の共有化が大切です。営業成績を上げた人がいたら、皆でどうしたのと尋ねましょう。その自慢話を聞いて上手に真似する。成功した事例を引っ張りあげて、皆で共有化していくことが大切です。

 

 さらに、「報告」「相談」「連絡」がうまくいっていない会社に将来性はありません。良い情報も共有化しなくてはいけないが、事故情報などもすぐ伝達される風通しのいい会社を作らなければいけない。事故が起こったなど悪い情報は瞬時に社長に伝わることが必要です。

Ⅱ 知恵を絞ったコストダウン

仕事のやり方を変える創意工夫が大切

大谷 コストダウンといえば、何がなんでも安いものを仕入れるといった考え方もありますが、私は違うと思います。仕事の創意・工夫こそ大切です。


 事務の女性が1日半かかって仕分けていた請求書の付合わせを見ていて、コンピュータに詳しい若者に何とかできないかと相談したところ10分でできるように改善されたこともあります。疑問があったらすぐ対処しましょう。


 常に、臨機応変の態勢を築いて対応していくことが創意・工夫を生み出します。

 

 人より仕事が速い人がいれば、その人のやり方を皆で真似る。一日のなかでも他の仕事と組み合わせる。1人何役もさせる。

 総務部には人事課とか庶務課とは作らない。1人3役できるような人材をつくらなければ効率化は進みません。

Ⅲ 物流業にトヨタ生産方式を導入

人の流動化と仕事の平準化を図る

大谷 仕事の平準化を図る。営業をほっておくと忙しい時の仕事をとってきます。忙しい時に仕事とってくるのであれば、誰でもできる。

 1年、1か月、1日の中に谷を作らない=暇な時を少なくすることがもっとも重要です。営業には谷の仕事をとってくるように指導する。例えば月曜日に仕事がないなら、月曜の仕事をとってくる努力する。一日のうちでも余った時間を有効活用するために、夕方の仕事をとってくる──ということです。

 

 もう一つは、流動的な人の配置ができるかどうかです。1階が忙しければ、2階の人を向かわせる、総務の人間でも発送の現場に助けに行くということができるかどうかです。

 そこに気づくことが大切です。トヨタという会社はこれをやっている。平準化・流動化ができるからすごいのです。

 

Ⅳ コストダウンの実例

優良な運転者の実践を共有化する

大谷 コストダウンの事例についても少し紹介します。

 

 たとえば、整備課長にタイヤ交換の基準について尋ねたところ、ドライバーの希望で変えているとのことでした。 

 コンサルタントに聞いたところ、タイヤ交換をドライバー任せにしている状態は「会社」とは言えない。それでは「個人」だと。

 そこで、タイヤ交換は残り溝何ミリと基準を作らせました。タイヤローテーションの原則も決め、月1回の空気圧管理も徹底させました。これらの実行でタイヤのコストが1年間に3分の2に削減できました。

 

 車体ごとにディーラーをバラバラにして車検をお願いすると高止まりになります。一つのディーラーに一本化することがコストダウンの第一歩です。また、車両部品も純正部品から一般部品に変更するだけで価格が半減するものもあります。

 

 エコドライブ推進も優秀ドライバーの実践を共有化します。京都から東京まで高速道路で550kmのうち下りの坂道が延べ50kmぐらいあるそうですが、うちのドライバーは坂道に入ったら必ずアクセルを離す惰力走行を実践しています。

 さらに、高速道路に乗って時速75キロで走行するのが一番燃費効率がいいのですが、75キロに上げるときにあわてずゆっくりと加速して75キロにすると最も効果的だそうです。これらはすべてドライバーの知恵の共有化です。

 1台1台の燃費を調べて管理・指導していますか。よい情報を参考にすることが燃費を向上させていますが、会社が主体性をもって実践化させていくことが大切です。

一番大切なのは、お客様と社員 次が地域社会 最後が株主

大谷 配車係の役割も大切です。配車だけするのではなく、電話で営業して1台当たりの売上げアップを常に意識しています。行って帰ってくるという発想ではなく、配送の帰りに横持ちの仕事をとるなど、きめ細かくプラスしていくことです。

 

 また、「かさ」が大きくて軽い物と「かさ」が小さくて重い物を組み合わせるとか、1車の積載効率を上げていくこと。1日でも午前中に2回仕事をとり回転率を上げること。昼休み時間を交替制にすることなども効率化の例です。

 

 さて、もう時間となりました。いろいろと私の経営ノウハウを述べて参りましたが、少しでも皆様の参考になったことがあれば幸いです。

 

 最後に、米国のジョンソン&ジョンソン社の社是を引用したいと思います。

 同社は企業が重視すべき順番を

 一番:お客様、ニ番:社員 三番:地域社会 四番:株主 としています。

 私は、お客様一番とともに社員も一番で同じくらい重要ではないかと考えています。皆様も、この素晴らしい社是の考え方を踏まえ、互いに良い経営をやっていこうではありませんか。

 

 どうも、長い間、ご静聴ありがとうございました(拍手)。

タカラ物流システム