タカラ物流システム(株) 常務執行役員
安全品質環境推進室長
丸山 利明
当社の安全・品質・環境への取組みについて、これまで弊社で実践してきた活動を踏まえて、丸山利明常務執行役員が報告を行いました。
例年、この場では弊社で発生した重大事故などの情報を紹介してまいりましたが、今回は少し趣向を変えて、弊社のこれまでの安全風土構築の取組みの中で、成功例についていくつかご紹介したいと思います。
まず第一は事故研究(事例)の活動です。
ここでご紹介する例は少し古い事故ですが、右折時に渋滞した対向車線の車の車両後部と衝突した事例です。
事故の直接原因として、右折時の右側への安全確認が不十分だったということは明らかですが、ここで興味深かったのは、事故研究会でドライバーが管理面の要因として「あいまいな点呼」を問題にしたことです。
点呼の実態やデジタコのチェックができていないことを指摘し、「あんな点呼では意味がない。管理側もしっかりしてくれ」と意思表示しました。
その当時の営業所の点呼は、朝の4~5時に出庫するドライバーに対して、点呼実施者がソファーに座り、スリッパに咥えタバコで、「あー。気をつけて行ってらっしゃい」と言って送り出す……。これが「点呼」の実態であったということでした。
そこで、対策としては以下の2点に絞られました。
1番目は、右折時の安全確認の徹底ですが、単に抽象的に「確認する」だけでは意味がないので、「1、2,3の手順で確認する」と具体的な確認方法を定めました。
2番目は管理面の対策で「点呼の徹底」ですが、これも「点呼を確実に行い、毎日右折の確認方法を点呼者が必ず指示する」と決めて、点呼者が毎日「1,2,3の右折確認方法」をポスターを見せて指導することで、はじめて事故防止に結びつくと位置づけたのです。
次に、エコドライブの実践と効果をお知らせします。弊社の平均燃費の推移を見ますと、1リットル当たり3.9kmという数字です。
もっと良い会社もあるでしょうが、長年の実践でかなり改善してきました。こうして燃費が向上するにつれて事故件数も減少してきました。
燃費のいい人は事故を起こしません。以前と違って、多くのドライバーが「我慢できる運転」を実践できるようなってきました。
これは、いつも私達が使っている燃費記録用紙です。給油ごとに燃費計算するのですが、グラフ上で前年度の平均燃費と常に比較できる形になっています。
ドライバー自身、昨年より悪い燃費が出たとき、やむを得ず急いでいたとか、その理由はわかっています。燃費比較をすることで、次にはどんな運転をすれば取り戻せるかと考えますので、これが動機づけとなります。
今では、すべてのドライバーが自分の走行燃費を小数点第2位まで言えるようになっています。
この用紙は会社が考えてやらせたものではなく、あるドライバーが「こんなことやってみませんか」と具体的に提案してくれたので、それを改良して利用しています。
このほか、最近、ドライブレコーダーの分析ソフトを開発しましたので、教育に使っていきたいと考えています。
ここで、動画を見ていただきたいと思います。
ドライブレコーダーの4つのカメラが、前方だけでなく、サイド、車台、運転席などを撮影しています。運転席の画像を撮影するのは、運転者の操作や確認などの動作をプロに診断してもらうことができるからです。
このほか、タンクローリー車の場合は、荷台の上を常に撮影できるようにカメラを設置しています。以前、ローリーの荷台からの転落事故が発生していますので、事故防止教育に使用できるのではないかと考えています。ウイング車では、ウイングを開けて積み込み時のチェックなどにも活用できます。
また、フォークリフト全車にもドライブレコーダーを設置して、リフト操作とリフトマンの動きを確認できるようにしています。これも画像診断による教育を予定しています。
4分割の右下が荷台の映像
ドライバーの操作映像が重要
弊社では、今後ドライバー教育を集合教育から個人指導に力点を置いていこうと考えています。今回、非常によいソフトを開発いたしましたので、診断・教育に役立つと期待しています。
ちなみに、すでに事務職員全員のドライブレコーダー診断を実施したところ、とくに指導が必要な3人が絞り込めました。この3人をピンポイント的に重点指導しようと思っています。
このドライブレコーダーについては後ほど新規事業で詳しくご紹介します。
次に品質ですが、品質面では破損事故撲滅に依然として力を入れております。
破損金額だけでなく、破損件数の減少を目指していますが、破損の原因ではフォークリフト作業における事故が60%と非常に大きな割合を占め、なかでもトラックドライバーの作業事故が多いのが特徴です。
今年は10%削減目標をたてていきたいと考えています。
毎年、パートナー会社の皆様と「安全品質対策会議」を開催していますが、今年はこのなかで、ドライバーのフォークリフト事故を防止するための研修を加えていきたいと考えていますのでよろしくお願い申し上げます。
また納品トラブル防止も重要な課題です。誤ピッキングして誤納品になり、大きなトラブルに発展した事例があります。
対策としては、商品コードやロット数量などについて2重3重のチェックをしてくださいとお願いしています。
また、遅延することなどが判明したときは、ドライバーから確実に中継会社 → 配送センターに連絡をいただきたいと思います。
確実な事前連絡でクレームを防ぐことができます。
いつも、申し上げることですが、無条件に「安全」というものがあるわけはありません。
常に存在するのは「危険」であり、危険に対して何かをしてはじめて「安全」であることができます。
そして、事故を防止するためには、常に現場を優先し、現場と管理が一体となっていくしかないと思っています。
今年もその覚悟でやっていきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。